世の中には、ずっと長いあいだ解決できていない問題がたくさんあります。
それらの問題を世界中の人たちが力を合わせて解決しようと、193の国が集まって話し合い、17の目標を定めました。それらを「エス・ディー・ジーズ(SDGs)」と呼んでいます。「エス・ディー・ジーズ(SDGs)」は、「だれひとり取り残さない」ための取り組みで、2030年12月31日までにやりきろうとしています。
日本も、もちろんその目標に取り組むことになっています。
みんながこの目標を知らないことには、やりきることはできない。だからまず、その目標をひとつずつ説明するね。
イラスト:カトウナオコ
目標1:
ひどく貧しいくらしをする人をなくす【貧困をなくそう】
1番目の目標は、世界中で「ひどく貧しいくらしをしている人」をなくすことです。
世界には、1日に使えるお金が200円までという人たちが、だいたい7億人(日本中の人の6倍くらい)います。
「お金を使わない日が1日くらいあってもだいじょうぶじゃない?」と思うかもしれませんが、1日だけがまんすればよいわけではなく、明日も、あさっても、ずっとそのくらしです。その200円で、食べ物や水、電気、住む場所、服など、生きていくのに必要なものをやりくりしなければなりません。
子どもでいうと、世界中で3億人以上、6人に一人の子どもがそんなくらしをしています。
これは外国だけの話ではありません。日本でもおなかいっぱい食べられない、病院に行けない貧しい人が増えています。
【考えよう!調べよう!】
- 今日、家に帰れず、200円しかないとしたら、何に使うかな?
- どうして、貧しいくらしになる人がいるんだろう?
目標2:
すべての人に安全で栄養のある食べ物を【飢餓をゼロに】
2番目の目標は、世界中のだれもが、安全で栄養のあるものを食べられるようになることです。
みんなはごはんを残したり、捨てたりしていないかな?
世界中の4人に一人は、いつも食べ物が足りないか、体によくない食べ物しかありません。
さらに、10人に一人は、その日食べるものがまったくないほどのつらいくらしです。
どうして食べ物が足りないかというと…
- 気温が高すぎる、雨がふらない、反対に大雨や洪水で作物が取れない
- 貧しくて食べ物が買えない
- 人の数が増えている国では、食べ物が足りない
などのわけがあります。
【考えよう!調べよう!】
- 日本では1日あたりどれくらいの食べ物が捨てられているか?調べてみよう。
- 今日食べたものの材料は、どこで作られているか調べてみよう。
目標3:
みんなが元気に生まれ、健康でいられますように【すべての人に健康と福祉を】
3番目の目標は、だれもが元気に生まれ、健康にくらせる世界になることです。
世界には、10人に1人が5才になる前に死んでしまう国もあります。
お医者さんや薬が足りなくて、病気を防げない、治せない国もあります。
また、元気にくらすには、体だけでなく心の健康も大切です。
どんな人でも、どんなこまりごとでも、みんなで解決し、幸せになれるよう助け合うしくみも必要です。
【考えよう!調べよう!】
- 病気にならないために、必要なことは何だろう?
- 日本で、若い人なのに死んでしまうことがあるのは、なぜだろう?
目標4:
みんなが学校に行けますように【質の高い教育をみんなに】
4番目の目標は、世界中のみんなが学校に行けるようになることです。
- 大人が戦争やあらそいごとをしていて、安全に学校に通えない
- 家族を支えるために働かされて、学校に行く時間がない
- 障がいや、女であることを理由に学校に行かせてもらえない
- 学校、先生、教科書が足りない
などの理由で、世界中の子どものうち、12人に1人くらいが小学校に通えず、6人に1人は中学校に通えていません。
学校に行けないと、文字の読み書きができないまま大人になってしまいます。
文字が読めないと、できる仕事が限られてしまいます。
【考えよう!調べよう!】
- 学校で学ぶことには、どんな意味があるのだろう?
- 学校に行く子どもが少なくなると、世の中はどうなるだろう?
目標5:
男か女かで、差をつけない世の中にしよう【ジェンダー平等を実現しよう】
5番目の目標は、男か女かを気にせず、同じようにくらせる社会を作ることです。
きみは、「男のくせに」「女の子なんだから」なんて言われたり、聞いたりしたことはないかな?
ざんねんなことに、世の中ではこんなことが起こることがある。
- 女であることを理由に、学校に行かせてもらえないことがある
- 女であることを理由に、仕事でチャレンジできなかったり、リーダーになれなかったりする
- 女の人や女の子が、モノのように売られたり買われたり、痛めつけられたりする
世界中の156の国で、女の人と男の人がどのくらい同じようにくらせているかを調べてみたらどうだったと思う?残念ながら日本は、女の人が男の人と同じように暮らせていないとして、ランキングは120位、下から数えたほうが早いくらいなんだ。
たとえば「校長先生」。たとえばテレビに出てくる「社長さん」や「大臣」、「はかせ」などは男の人が多くないかな?それってなぜなんだろう。
【考えよう!調べよう!】
- 「男の子だから」「女の子だから」と言われたり、思ったりしたことはあるかな?
- 男の人が、「赤ちゃんや子どもの世話をするために会社を休む」ことをどう思う?
目標6:
きれいな水とトイレをみんなに【安全な水とトイレを世界中に】
6番目の目標は、いつでもきれいな水やトイレが使える社会を作ることです。
日本ではじゃ口をひねれば安全な水が出てきますが、世界に住む人の4人に1人は、水道のないくらしをしています。また、水道があっても、飲める水ではなかったり、値段がとても高かったり、ときどき止まってしまったりします。
また、12人に1人くらいはトイレがないので、外の草むらなどでウンチやおしっこをしています。
【考えよう!調べよう!】
- 水道が使えなくなったら、きみのくらしはどうなる?
- 外でウンチやおしっこをし続けたら、どうなると思う?
目標7:
エネルギーを使えるように、できるだけ地球をよごさずに【エネルギーをみんなに。そしてクリーンに】
7番目の目標は、いつでもどこでも自由に、エネルギーが安く使える社会を作ることです。
エネルギーとは、「光を出す」「温めたり冷やしたりする」「音を出す」「ものを動かす」などのはたらきをしてくれるもののこと。
みんなの家で言うと、明かりやエアコン、冷蔵庫、テレビ、スマホなどが電気で動いているね。料理はガスや電気が使われる。車は、ガソリンで動くもののほかに、電気で動くものもあるね。これらは、すべて「エネルギー」を使っているんだ。
ただ、世界では、10人に1人くらいが家で電気が使えません。
電線が通っていても、毎日のように電気が止まってしまう国もある。
料理にガスや電気を使えない人たちもいるし、ガソリンが高くて使えない人もいる。
だから、どこでも安く、手軽にエネルギーが使えるようにしていきたいという目標があるんだ。
ちなみに、ものを燃やしてつくる「火力エネルギー」は、地球の気温をどんどん上げてしまうと言われているので、太陽光や水の力、風の力といった、地球にやさしいエネルギーと言われる「再生可能エネルギー」を使っていこうという目標もあるよ。
【考えよう!調べよう!】
- 電気が使えないと、きみの1日はどうなるかな?
- 再生可能エネルギーには、どんなものがあるかな?
目標8:
だれもがやりがいのある仕事をして、みんなで豊かになろう【働きがいも経済成長も】
8番目の目標は、みんなが人間らしい仕事、やりがいのある仕事をして、豊かになっていこうというもの。
世界には、こんな人たちがたくさんいる。
- 働きたいのに、仕事につくことができない
- いっしょうけんめいたくさん働いても、いつまでたっても貧しい
- 家を助けるために、子どもが働かなければならない
- 子どもが戦争で兵士として戦わされる
【考えよう!調べよう!】
- 働かない人、働けない人が増えた国は、どうなるだろう。
- 「安いこと」はだれにとってもいいことだろうか?みんなが安売り競争をしたら、どうなるだろう?
目標9:
社会やくらしの土台を整えよう【産業と技術革新の基盤を作ろう】
9番目の目標は、社会やくらしの土台(「インフラ」といいます)が整った社会を作ることです。
インフラには、水道や電気、道路や橋、鉄道、病院や学校などがあります。
きみがいま使っているインターネットもインフラの1つですが、世界のだいたい2人に1人くらいがインターネットにアクセスできません。
いったんインフラが整っても、地震や台風などの災害で使えなくなってしまうことがある。
そういうときに、すばやく元に戻せるよう準備しておくことも大切なんだ。
【考えよう!調べよう!】
- 日本で、インフラが使えなくなったくらいの災害はどんなものがあるだろう。
- インフラは、だれのお金で、だれが決めて作っているんだろう。
目標10:
人や国によって差をつけない社会にしよう【人や国の不平等をなくそう】
10番目の目標は、人や国によって差をつけない社会を作ることです。
いま、お金のある人はますますお金持ちに、お金のない人はますます貧しくなっています。
たとえば、世界中の水を、100人に1人くらいの人は思いきりじゃぶじゃぶ使えるいっぽうで、89人には生きていくのに必要な水さえ足りず、10人はいつものどがかわいているとしたら、ちょっとヘンじゃないかな?
お金だってそれと同じで、苦しいほど貧しい人たちがいるなら、もうすこしその差を小さくしていくべきなんだ。
また、悲しいことに「女だから」「障がいがあるから」「外国人だから」といった理由でそんをしたり、なかま外れにされたりすることがある。
どんな人にも、同じようにチャンスがある社会がいいよね。
【考えよう!調べよう!】
- 日本では、女の人と男の人では、仕事をしてもらえるお金に差があるのかな。
- 自分のまちでは、障がいのある人はどんな仕事をしているのだろう。
目標11:
【住み続けられるまちづくりを】
11番目の目標は、みんなが住みやすいまちを作ることです。
たとえば日本でも、大雨や台風で家が流されたり壊れたりして、住みなれた場所を離れないといけなくなる人たちは毎年のようにいるよね。
世界でも、そんなふうに災害にこまる人たちがだんだん増え続けています。
でも、安全で便利な場所にあって、大雨や台風にも強い家は、高すぎて多くの人には買えないことが多い。
どんな人でも、高すぎない値段で、安全な家に住めるようにしよう、という目標です。
また、大きなまちでは、電車やバスがたくさん通っているけれど、いなかのほうではそうでもない。電車もバスも通っていないところもある。
そうすると、自分の車がないとか、車の免許がない人は、買い物にもこまってしまう。元気でお金のある人だけでなく、障がいのある人やおじいさん・おばあさんでも、毎日の買い物にこまらないまちにしようにしようという目標もあるよ。
【考えよう!調べよう!】
- ここ1年で日本に大雨や台風で水につかったり、壊れたりした家はあったかな。
- 近くにお店がなく、車を運転できない人は、どうやって買い物をすればいいだろう。
目標12:
ムリとムダを減らそう【つくる責任、つかう責任】
12番目の目標は、ムリとムダを減らすことです。
ムリってなんだろう?
人間はお金をもうけようとして、ついやりすぎてしまうことがある。
地球や生き物を痛めつけてしまうとか、今はよくても、子どもやその子どもが大人になったときこまってしまうようなむちゃなモノのつくりかたや売り方をやめよう、ということ。
そして、つくる人だけでなく、つかうほうの人たちも「ムダ」を減らすことが大切。
たとえば「食べ残し」。きみは、日本の学校の給食がどのくらい捨てられているか知っているかな?
計算によると、子どもひとりにつき、1年間にお茶碗45杯もの食べ物を、捨てているんだって。
世界では食べるものがない人たちもいるのに、もったいないね。
【考えよう!調べよう!】
- 学校や家で「食べ残し」を減らすにはどうしたらいいだろう?
- 賞味期限と消費期限の違いは何だろう。
目標13:
自然災害を減らそう 【気候変動に具体的な対策を】
13番目の目標は、自然災害を減らすことです。
おじいさんやおばあさんが子どもだったころと比べても、今の日本の気温はじわじわと上がってきているし、川があふれてしまうような大雨の日も増えています。
これは、エネルギーをつくるためにモノを燃やしたり、森の木を切ったりすることで「二酸化炭素」が増えて地球の温度が上がってきているからだと言われているよ。
だから、みんなでできることとしては、たとえばエネルギーをムダづかいしないこと。
そして、もし大災害が起こっても、早く元に戻せるような仕組みづくりを考えていかなければならない。
【考えよう!調べよう!】
- おじいさん、おばあさんに、子どものころと比べて、暑くなったか聞いてみよう。
- エネルギーのムダを減らすために、毎日のくらしのなかで何ができるかな。
目標14:
きれいな海を取り戻そう【海の豊かさを守ろう】
14番目の目標は、きれいな海を取り戻すことです。
わたしたちが毎日使っているペットボトルやビニールぶくろは、一度使っただけで「プラスチックごみ」になります。
そのうち、日本からは毎年2万〜6万トンのプラスチックごみが海に流れ出てしまっているんだ。(2万トン=東京タワーが5本分ぐらい!)
魚やカメが、エサだと思ってごみを飲みこんだり、体に絡まって動けなくなったりしてたくさん死んでいる。
わたしたちだって、家に息苦しくなるほどごみを投げ入れられたらイヤよね。人間だからって、海の生き物を苦しめていいわけはない。
また、魚を取りすぎて、海の生き物たちが滅びそうになっている。
魚を取りつくしてしまうような、ムリな漁をやめようという動きもあるよ。
【考えよう!調べよう!】
- 1日に家で捨てたプラスチックをメモしてみよう。食品トレー、ストロー、ペットボトル、おやつの包み…どのくらいあるかな。
- ペットボトルやビニールぶくろのごみを減らすには、何ができるだろう?(ヒントは下の「小学生にも分かる、マイクロ・プラスチック問題」の記事にもあるよ!)
目標15:
きれいな陸も取り戻そう【陸の豊かさも守ろう】
15番目の目標は、動植物や虫たちを滅ぼさないということ。
地球に住んでいるのは人間だけではありません。
人間よりずっと多くの動植物や虫たちが、大昔から命のバトンをつないできました。
でも今、地球の多くの場所で人間が森林を切り開いてきたことで、動植物や虫のすみかが減っています。また、人間が食べる野菜や、牛や豚やニワトリの食べ物を作るための農業で、農薬がたくさん使われることも、動植物や虫を苦しめたり、減らしたりしています。
「自分の知らない虫や動物がいなくなっても、関係ないよ」と思う人もいるかもしれません。
でも、ある虫がいなくなることで、花粉が運ばれなくなって絶滅する植物だってあるかもしれません。また、その虫や植物を食べていた鳥や動物が絶滅するかもしれないのです。
世界中の生き物は、人間の知らないところでつながり合っています。
それに何より、人間だけが生き残って、ほかの動植物は絶滅してもいいというのは、おかしな考えです。
森や、動植物・虫たちを、減らさないための行動が必要です。
【考えよう!調べよう!】
- どうして森の木は切られていくのだろう?
- どうして農薬を使うのだろう?
目標16:
平和と公正をすべての人に
16番目の目標は、暴力や悪さをする人のいない社会を作ることです。
今も世界のどこかで、5分に1人の子どもが暴力によって命を落としています。
また、いじめや、幸せを奪うようなひどいことが起きています。
だれかに都合のいいように、法律が守られないこともあります。
戦争や、争いごとも終わっていません。
【考えよう!調べよう!】
- いじめをなくすために、きみができることはあるかな?
- 昔の日本はなぜ、戦争をしていたのだろう?
目標17:
みんなで目標をやりとげよう【パートナーシップで目標を達成しよう】
17番目の目標は、これまでのいろいろな目標を世界中のみんなでやりとげることです。
でも、世界には豊かな国もあれば、貧しい国もある。
たとえば、毎日お腹いっぱい食べていて元気な人と、食べるものがなくてお腹を空かせている人がいたとしたら、みんなに「いっしょに目標をやりとげよう!」といっても、病気がちな人には難しいよね。
元気のある国がつらい国を助け、元気のある人がつらい人を助けなければ、みんなでいっしょに問題の解決なんてできっこない。
大人も子どもも、その気持ちを持って、世界の問題を解決するために同じ目標に取り組んでいこう。
【考えよう!調べよう!】
- 困っている人のために、きみが何かしたことはあるかな。
- きみが困っていたときに、助けてもらうとどんな気持ちかな。
「小学生でもわかるフェアトレード」も読んでみてね!