「あなたの性別は何ですか?」、そんな質問をされたらなんて答えるかな? 
すぐに答えることができる人もいるかも知れないけれど、「自分は男として育ってきたけど、本当に男なのかな? 女なのかな?」と悩んでしまう人もいるかも知れないですね。

では、これから誰か他の人を「好き」になる時があった時、男の人なら女の人を、女の人なら男の人を好きになるかも知れません。でも男の人が男の人を、女の人が女の人を好きになる時もあるかも知れません。

そんな時、「自分は変なのかな?」なんて考える必要はありません。人間にとって、そんな気持ちになるのは自然なことで、「性別」にはいろいろな考え方があります。これを、「LGBTQ+(エルジービーティーキュープラス)」なんていいます。

ここではそんな、LGBTQ+についてしっかり勉強していきましょう。

「性」ってなんだろう?

皆さんは、生まれた時に「性別」というのが決められます。
人間をはじめとしてすべての「生物(せいぶつ)」は、その体を作る「遺伝子(いでんし)」というものの作りによって、「オス」と「メス」に分かれます。
見た目で分かりやすいのは「生殖器(せいしょくき)」というものの違いで、分かりやすく言えば人間の場合は「おちんちん」がついているのがオス(男)、ついていないのがメス(女)と別れます。

これを難しい言葉で「身体的(しんたいてき)な性」といいます。

自分の気持ちで決まる性別「性自認(せいじにん)」

次は、自分で自分のことを「男」と思うか、「女」と思うかという性別。これを「性自認(せいじにん)」といいます。これは、前の体のつくりと気持ちが一緒の場合もあるし、一緒ではない場合もあります。

好きになる人の性別「性的指向(せいてきしこう)」

次は、「好きになる人」の性別。人は他の人のことを「好き」になる事があるんだ。これは、友だちとか親・いとこのことが「好き」という気持ちとは少し違う、特別な気持ちになることがあって、これを「恋(こい)」とか「愛(あい)」なんていうよね。

その時、男が女を好きになる場合と、女が男を好きになる場合、そして男が男を好きになる場合と、女が女を好きになる場合があるんだ。これを「性的指向」というよ。

どんな風に振る舞うかの「性表現(せいひょうげん)」

最後が、自分が「男らしく振る舞うか」「女らしく振る舞うか」という「性表現」。例えば、身体的な性も、性自認も女の人だけど、スカートをはくのは好きじゃないし、髪の毛も短くしたいという気持ちもあれば、逆にどちらも男の人だけど、女の子がよく着る服がおしゃれで好きとか、髪の毛を長くしておきたい、スカートをはきたいという男の人もいるよね。

このような、自分がどんな姿でいたいかというのを「性表現」というよ。

子の「性自認」、「性的指向」「性表現」を合わせて「SOGIE(ソジー)」といい、このソジーの組み合わせがいろいろとあるんだ。これを分かりやすく分けたものを「LGBTQ+」というんだ。

LGBTQ+(プラス)ってどんな人たち?

LGBTQ+とは、英語のレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシャル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クエスチョニング・クィア(Questioning・Queer)の頭文字(かしらもじ)をとった言葉だよ。

それぞれ、次のような意味があるんだ。

  • レズビアン(L):女の子のことを好きな女の子
  • ゲイ(G):男の子のことが好きな男の子
  • バイセクシャル(B):男の子も女の子もどっちも好きな人
  • トランスジェンダー(T):生まれたときの性別(せいべつ)とはちがう性別(せいべつ)として生きたい、と思う人
  • クエスチョニング・クィア(Q):じぶんの性がわからない。または、決めたくない人+:好きになる対象が性別(せいべつ)にとらわれない人やじぶんの性を「男の子」「女の子」に限定(げんてい)しない人など、そのほかたくさんの性のあり方や考え方をあらわしている

このように、いろいろな性や性別の考え方があることを、分かりやすくまとめたものだね。

LGBTQ+の人はどのくらいいるの?

日本のLGBTQ+の割合(わりあい)は、左利きの人と同じくらい

日本にLGBTQ+の人は、どのくらいいるのかというのは電通総研(でんつうそうけん)ダイバーシティ・ラボというところが調査した結果によると10人に1人。
他の調査でも、3%〜10%と言われているんだ。海外を含めても、約9%くらい。これは、日本人の左利きの人とほぼ同じくらいなんだよ。

自分が左利きの人や、身近に左利きの人もいるんじゃないかな? それと同じくらいLGBTQ+の人もいるというわけ。

LGBTQ+の人たちは、けっして遠い存在(そんざい)なのではなく、わたしたちが知らないだけで身近にいる大切な仲間(なかま)なんだ。

知っておこう!カミングアウト・アウティング・アライってなあに?

ソジーやLGBTQ+の考え方は、かなり広がってきたけれど、まだまだ特に日本では「男は男らしく」、「女は女らしく」という昔の考え方のまま、変わることができない大人の人もたくさんいるんだ。

それで「自分は男の子だけれど、本当は女の子として生きていきたいんだ」とか「自分は女の子だけど、女事のことが好きになっちゃった」なんて時に、恥ずかしくなってしまったり、だめなことだと思ってしまって誰にも言えないで悩んでいる人たちがいっぱいいるんだ。

そこで、大事な考え方に「カミングアウト」というものがあるよ。

「カミングアウト」というのは、自分がLGBTQ+だということを、まわりの人に打ち明けること。

カミングアウトすると、自分らしさをかくす必要(ひつよう)がなくなったり、自分らしく生きることができるようになったりするからとても大切なことなんだ。
それによって、相手がおうえんしてくれたり、気持ちをわかってくれたりするんだ。

もし友だちがカミングアウトをしてくれたら

もし、友だちからカミングアウトをうけたら

  • 自分を信頼(しんらい)して話してくれたことに「話してくれてありがとう」と伝える
  • こまっていることはないか、必要(ひつよう)なときはサポートするよと伝える
  • 友達がLGBTQ+だということを、ほかの人に勝手(かって)に伝えない
  • カミングアウトをうけて、どうしたらいいか悩んだときは専門(せんもん)の相談窓口(そうだんまどぐち)をたよる

カミングアウトは、自分の気持ちや性のことを相手に伝える大事なステップだよ。

ただ、つねにリスクをともなうものだから、それぞれの人の状況(じょうきょう)や安全性を考えて慎重(しんちょう)に判断(はんだん)することが大切なんだ。

アウティング

もし、友だちから「カミングアウト」をしてもらった場合、これを他の人に話してしまうことはよくありません。これを「アウティング」といいます。
たとえば、友達が「自分は男の子だけれど、男の子がすきなんだ」と自分だけに話をしてくれたのに、それをほかの友達に話をしてしまうことはアウティングになるよ。
友達からの信頼(しんらい)もなくなってしまうし、かるい気持ちでいいふらしてはいけないことなんだ。

アウティングは、絶対にしてはいけないことだよ。
大事なことを話してくれた人の気持ちを守るためにも、ヒミツはきちんと守ることが大事なんだ。

アライ

大切なことは、性や性別の考え方にはいろいろなものがあり、自分と考えが違うこともあるという「理解(りかい)」をすること。これを「アライ」といいます。

先の通り、大人の中には古い考えのままの人たちもいて、LGBTQ+の事を理解することができず、怒ったり差別をしたりする人たちもいるし、それを子ども達にも同じように考えるようにすることで、LGBTQ+への理解が進まないことがあるんだ。

アライを広げていくことで、LGBTQ+の人たちが安心して、自分らしく過ごせるようになるんだ

たとえば、LGBTQ+の友だちが、学校で困っている時にサポートしてあげたり、「みんなちがっていいんだよ」と気持ちを大事にしてあげたりする人はアライになれるよ。
ただ、自分の思い込みで相手の状況(じょうきょう)を決めつけたり、カミングアウトを強くすすめたりするようなことはしてはいけないよ。

LGBTQ+の人たちが困っていること、考えなきゃいけないこと

LGBTQ+の人たちは、学校や会社で自分らしくいられず、困ることがあるよ。

今の日本では、まだまだLGBTQ+への正しい理解が広がっていないので、自分のことをカミングアウトすることで、周りからいじめや嫌(いや)がらせをうけることへの不安や、居場所(いばしょ)がなくなることで生きづらさを感じているからなんだ。

たとえば、

  • 学校で「女みたいな色を着るな」「男のくせに」と言われて傷(きず)ついた
  • 男子トイレや女子トイレのどちらも使いづらいと感じることがある
  • 病院などで、病気のことを説明する時にカミングアウトをするかを悩む
  • 男性(女性)専用のスペースや、車両などに入りにくい、乗りにくい

など、思いやりのない環境(かんきょう)が気持ちをくるしくさせちゃうこともあるんだ。

そのため、学校や会社では、性別(せいべつ)にとらわれない選択肢(せんたくし)をよういするなど、差別(さべつ)をなくして安心して過ごせる環境(かんきょう)づくりがとても大切なんだよ。

参照サイト

同性での結婚ができない。家族になれない

今、日本の「法律(ほうりつ)」という決まりでは、同性(男の人と男の人、女の人と女の人)は結婚することができないんだ。しかし、日本では結婚をしていないと「家族」とは認められないため、例えば次のような点でいろいろな部分で困ることがあるんだ。

  • 病院に入院した時などに、面会(会いに行く事)ができない
  • 保険に入ることができないので、パートナーが死んでしまった時に生活に困ってしまう
  • 養子(自分のこどもではない子を、自分のこどもとして迎え入れること)を迎え入れることができない
  • パートナーが亡くなってしまった時にお金などの「財産(ざいさん)」を守る「相続(そうぞく)」が受けられない

など、結婚しているとできるようになることが、どれも受けられなくなってしまうんだ。

日本のLGBTQ+への取り組みと考えなきゃいけないこと

法律(ほうりつ)をととのえること

今、日本では、LGBTQ+の人たちを守るための法律(ほうりつ)が整備(せいび)されてきてはいるよ。
たとえば、いくつかの自治体では、同性カップルを夫婦(ふうふ)としてみとめる「パートナーシップ制度(せいど)」があるんだ。
同性パートナーシップ制度(せいど)とは、「各自治体が男性同士、女性同士のカップルを結婚と同じような関係とみとめて証明書(しょうめいしょ)をくれる」しくみなんだ。

これによって

  • 病院で家族と同じあつかいをうけられる
  • 公営住宅に家族としていっしょに住むことができる
  • 生命ほけんのうけとり人をパートナーにすることができる

などのメリットがあるんだ。

ただし、法律(ほうりつ)としてみとめられているわけではないから、パートナーがなくなってしまったとき残されたパートナーは

  • なくなったパートナーがもっていた土地やお金の権利(けんり)をうけつぐことができなかったり
  • 親権(しんけん)と言って、のこされたパートナーのこどもの「親になる権利(けんり)」がもらえなかったり

法律(ほうりつ)で守られているカップルと同じとはいえないんだ。

でも、自治体で進んでLGBTQ+の人たちが暮らしやすいしくみを考えてくれることは、とても大事なステップになるんだ。
活動が広がっていくことで、社会の理解(りかい)につながるといいよね。

小学校での取り組み

小学校では、LGBTQ+の人たちへの正しい理解(りかい)と、性にはいろんな形があることを学ぼうとする取り組みが進んできているよ。

かなしいことに、小学生のLGBTのうち、68%がいじめや暴力(ぼうりょく)を経験しているんだ。

みんなが早い段階でいろんな性について学ぶことは、いじめや暴力(ぼうりょく)の予防(よぼう)にもつながるから大切なことなんだよ。

たとえば・・・

  • 2024年度から小学校の教科書には、性の多様性(たようせい)についてかかれるようになったよ

これによって、小学校から、いろんな性のあり方や考え方について学べるきかいがふえたんだ。

  • 一部の学校では制服(せいふく)の選択肢(せんたくし)をふやしているところもあるよ
  • 先生たちがLGBTQ+について学ぶきかいができるようになってきているよ

まだまだ、取り組んでいる小学校はすくないけれど、こうした学校での取り組みは、すこしずつではあるけれど、かわってきていることもあるんだよ。

海外の LGBTQ+への取り組みと考えなきゃいけないこと

国によって大きなちがいがあるものの、海外では、日本よりもLGBTQ+の人たちが平等(びょうどう)にくらせるような法律(ほうりつ)や教育(きょういく)のしくみづくりが進んでいるんだ。LGBTQ+の人たちが安心して生活するためには、差別(さべつ)をなくす法律(ほうりつ)やいろいろな性の形について理解(りかい)する教育(きょういく)がとても大切なんだよ。

たとえば

  • アメリカやカナダ、イギリスなどの一部の国では、同性のカップルが結婚できる法律(ほうりつ)があるんだ。

この法律(ほうりつ)によって、結婚の権利(けんり)が平等(びょうどう)になって、公的(こうてき)なサポートがうけられるようになったんだよ。

  • スウェーデンやオランダでは、学校でLGBTQ+について学ぶことになっているんだよ。

これによって、子供たちは、いろんな性のあり方について知ることができるんだ。

  • ドイツやオーストラリアでは、会社や公共(こうきょう)の場所でLGBTQ+にたいする差別(さべつ)を禁止(きんし)する法律(ほうりつ)があるよ。この法律(ほうりつ)のおかげで、会社で安心してはたらけたり、生活したりできるようになったんだ。

ただ、一部の国では、宗教(しゅうきょう)や考え方のちがいからLGBTQ+というだけで犯罪者(はんざいしゃ)あつかいされたり、死刑になったり、とても重いバツをあたえられる国もあるんだ。

だから、海外では、LGBTQ+の人たちの権利(けんり)を守るための、結婚や教育(きょういく)、差別(さべつ)にたいする法律(ほうりつ)の整備(せいび)が進んでいるよ。だれもが自分らしく生きる社会にするために、とても大事なことなんだよ。

参照

LGBTQ+とSDGsがつながっているわけ

SDGsの共通(きょうつう)の考え方は「だれひとり取りのこさない」こと。
でも、SDGsの中に、LGBTQ+がかかれていないことには理由があるんだ。
それは、国によってLGBTQ+にたいする認識(にんしき)がちがったり、宗教上の理由で同性婚(どうせいこん)がみとめられていなかったりするからなんだ。

SDGsの17目標の中に、LGBTQ+のことはかかれていないけれど、世界中の性的少数者(せいてきしょうすうしゃ)の人たちを「だれ一人取りのこさない」という意味(いみ)でかんけいないとはいいきれないんだ。

目標3「すべての人に健康(けんこう)と福祉(ふくし)を」

SDGsの目標3は、みんなが病気にならないようにすることや、心も体も元気でいられるようにすることを目指しているんだ。

こころもからだも元気でいることは、毎日楽しく過ごすためにとても大切だからだよ。

LGBTQ+の人たちは

  • LGBTQ+というだけで、医療(いりょう)をてきせつに受けることができなかったり、福祉(ふくし)サービスをつかわせてもらえなかったりすることがある
  • スポーツに参加しづらかったり、LGBTQ+の選手というだけで偏見(へんけん)や差別(さべつ)をうけたりする

だから、この目標はすべての人が健康(けんこう)で元気に過ごすために大切なんだよ。

目標4「質(しつ)の高い教育(きょういく)をみんなに」

この目標は、「だれも取りのこされないための教育(きょういく)」をめざしているんだ。

LGBTQ+の人たちの中でも、トランスジェンダーの人たちは、学校でたくさんのつらい経験(けいけん)をしているといわれているんだよ。

どんな人も安心して過ごせる学校があれば、不登校(ふとうこう)になったり、傷(きず)ついたりすることもへらせるよね。LGBTQ+の人は、学校の男女でわかれた施設(しせつ)がつかいづらかったり、いじめにあったりしやすいんだ。

だから、LGBTQ+の人たちも安心して教育(きょういく)をうけられることが大切だよね。

目標10「人や国の不平等(ふびょうどう)をなくそう」

目標10の「人や国の不平等(ふびょうどう)をなくそう」は、LGBTQ+の人たちが安心して生きられるように、差別(さべつ)や不公平(ふこうへい)をなくすためとても大切なんだ。

今の日本では、

  • 男の子同士、女の子同士での同性婚(どうせいこん)はみとめられていない
  • 学校や会社で差別(さべつ)をしてはいけないことだと禁止(きんし)する法律(ほうりつ)がない

など、LGBTQ+の人たちにとって不平等(ふびょうどう)なことがおおいんだ。

たとえば、LGBTQ+が結婚をみとめてもらえないことや、会社で自分の性のあり方を理由にやめさせられてしまうことがあるよ。
また、国によっては、LGBTQ+というだけで法律(ほうりつ)のバツをあたえられてしまうこともあるんだ。
だから、目標10はこうした不平等(ふびょうどう)をへらすために、あたらしい法律(ほうりつ)やしくみづくりがもとめられているんだよ。

参照

LGBTQ+についてのそうだん先・悩んでいる人へ

自分の性について悩んでいることやまわりにLGBTQ+の人がいて、どうサポートすればいいかわからないときは、専用(せんよう)のそうだん先があるよ!

  • 学校でアウティングされて困っている
  • 友達からLGBTQ+だとカミングアウトされた
  • カミングアウトするかまよっている

など、だれでもそうだんすることができるんだ。

ひとりで悩まないで、まずはそうだんしてみてね。

知ってほしい!LGBTQ+(プラス)のことのまとめ

  • LGBTQ+は、いろんな人の性のあり方やすきになる気持ち、自分らしさをあらわした言葉
  • SOGIE(ソジー)は、すべての人がもっている性の考え方や気持ちをあらわすもの
  • アウティングはしてはいけないよ。カミングアウトされたら、アライになろう!
  • 日本のLGBTQ+の割合(わりあい)は、左利きの人と同じくらい

LGBTQ+について知ることで、みんなが安心して暮らせる社会につながるんだよ。
LGBTQ+のことを知っておくことで、身近にいる大切な人を守れるかもしれないよね。
「力になりたい」という相手を大切に思う気持ちがあれば、今日からアライになることだってできるよ!

参照資料

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SDGsの17の目標(もくひょう)を、いっきに知ろう!
小学生でもわかるSDGs

この記事を書いた人

ともすた編集部

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