「ウェルビーイング」に興味を持って、このページを見てくれてありがとう!
ウェルビーイングとは?
ウェルビーイング(Well-being)は、英語で「well(ウェル)」:よい と「being(ビーイング)」:~であること、という2つの言葉がくっついた言葉。
そのまま日本語にすると「よい状態であること」だ。「満たされた状態」とも言える。では、「よい・満たされた状態であること」って、何だろう?
「とくべつにおこづかいがもらえた」?
「おいしいおやつを食べた」?
そういうのは、「ラッキー」(運がいい)とか「気持ちいい」って感じかな。
じゃあ、そのいい気持ちは、1週間後もずっと続いているかな? うーん、それはビミョウかもしれないね。
それに、もしきみが、家族も友だちもいなくて、重い病気で、だれかをだましてお金を手に入れて、おいしいモノを食べたとしたらどうかな? 心や体が本当に「よい状態である」…とは言えないよね。
そう、ウェルビーイングとは、(カンタンにいうと)体も心も元気で、大切で信じられる人とのステキなかかわりがあるとか、安全・安心なくらしができているとか、自分で決めてがんばってきたことがあって、これからのやる気もあって…みたいな、「これからも、いい感じじゃないかな」と思える状態にあることだと言われている。
もちろん「よい状態」というのは人それぞれだけど、「よい状態」だと思うことには、どんな共通点があるだろうかと、いろんな大人が研究している。
たとえば、こういう状態ではないか、と考える人もいる。
1) 「自分の人生を自分で選んできた」と思えること、納得していること
→仕事選びなどの自分の人生の大切なことを「だれかに言われたから」とか、「しかたなく」選んだと感じるのはつらい。
2) 日々の生活のなかで、家族や友だちなど、他の人と深くかかわっていると感じられること
→ひとりぼっちだったり、まわりの人を大切に思えなかったり、大切に思われなかったりしたら、さびしい。
3) 「必要な分のお金はある」、「自分が使いたいことにお金を使えている」と感じること
→お金がなくてあきらめることが多いとか、お金があっても「使いたいことに使えたなあ」と思える時がないと、ざんねんだ。
4) 体も心も健康であること
→体や心が元気じゃなかったら、もちろんつらい。
5) 地域の人たちとつながりをもち、自分が地域の一員であると感じられること
→地域の人がだれも自分とかかわらないとか、なかまはずれにされてしまうとかは、悲しいよね。
※「よい状態」は、人によってちがうだけではなく、時代や国によってもちがうから、上にある例も「変わっていくかもしれないこと」くらいに思っておいてもいいよ。
あと、もし今、子どものきみが「自分の人生を自分で選んできた」って感じられていなくても、あせらなくてもいいよ。きみは「これから」の人だ。上の例は大人たちが、あらゆる子どもたちが将来「ウェルビーイングな人生を歩んでもらうためには、何をすべきか?」を考える宿題みたいなものだから。
「ウェルビーイングとは?」まとめ
- ウェルビーイングとは、体も心も元気で「よい・満たされている状態」であること。
- お金やモノ、一時的な気持ちよさではないもの。
- 「よい状態」は、人によってちがう。時代や国によってもちがうこともある。
なぜ今、ウェルビーイングと言われるようになったのか
「ウェルビーイング」という言葉は、1925年くらいに生まれ、1946年ごろに広まり始めたと言われているけれど、ちょっと前まで、あまり注目されてこなかった。最近になって、よく使われるようになったんだね。
なぜかって?
じつは今は、「時代」がかわっていく大きな境目のときだからなんだ。
どんなふうにかわりつつあるのか、できるだけカンタンに説明するよ。
1.今までのやりかた・考えかたのままではヤバい⁉
日本や他の国では、長い間「お金をもうければ、豊かになって、くらしに使うためのモノが手に入る。それはみんなの幸せにつながる」と考えて、モノやサービスをたくさん作って、たくさん売って、がんばってお金をかせいできた。
とくに日本は1945年に大きな戦争で負けて、どこもかしこも焼け野原だったから、当時の人は、元通り、いや、よりよいくらしにするために、それはそれは、がんばった。(ほかの国の人々も、「日本の人たちは、すごくがんばった!」とびっくりするくらいだったらしい。その当時の人たちのがんばりのおかげで、いまのくらしがあるんだね。)
でも、お金はないとこまることもあるけれど、けっして「お金=幸せ」ではないよね。
そのことを忘れて、いろんな国が「わが国は、こんなに、モノやサービスをつくったよ!もりあがってて、すごいでしょう!」と、もうけるお金の合計をすごく気にしてきた。
でもさ…、ちょっと考えたらわかるよね。
サイアクな例でいうと、たくさんの人をわざと病気にさせて、くすり代や病院代がすごくかかったとしても、国全体として使われるお金は増えるんだ。
もうけるお金の合計だけでランキングが決まるゲームだったら、こんなサイアクな状態でも「勝ち」だけど、そんなゲームは、みんなにとってヒサンなだけだ。
それなのに、商売の世界では、とにかくたくさんお金をもうけたら「すごい!えらい!」ってほめられちゃうことが多かったものだから、お金もうけがいちばん大事だと考えて「自分達だけ」「今だけ」よければいいか、と考える人が増えてしまった。
たとえば
1) ほかの人を安いねだんでこきつかって、自分たちだけもうける。
2) たくさん売れるように、たくさん作ってたくさん使い捨てさせる。
3) 動物や植物を苦しめる。
4) 森や海や空気をよごす。
みたいなことをしても、「もうかっていれば、まあOK!」でやってきてしまった。ええ~…!?
そんなことをする人たちがたくさん増えて、競争しつづけたものだから、「社会問題」とよばれる、むずかしい問題がたくさん生まれてしまった。
1)の例、フェアトレードが必要なくらい、不公平になってしまっていること。
2)~4)の例は、マイクロプラスチック問題。
3)の例はアニマルウェルフェアの問題。
多くの人が、自分たちにつごうのよいことだけを考えてやってきたことで、一部の人だけではかたづけられないような、むずかしい問題が増えてしまったんだ。ひゃ~!
2.人の数が減っていく!
これまで日本では、2000年くらい、ずーっと人の数が増えてきたんだけれど、これからの日本は、お年よりが増て、子どもの数がぐんと減ってしまっているから、人がどんどん減っていくと考えられている。どれくらいかって? このままいくとあと100年後には、今の人口の半分くらいになっちゃうんだ!
「人の数が増えていくだろう」と多くの人が考えている時は、たくさんの人が住む家を新しく建てて、食べたり飲んだりするモノ、着るモノや使うモノなどを作らなきゃいけない。人はたくさんいるから、作れば作るほど売れる。すると、もっとたくさんのモノを、より早くつくろうという競争になりがちだ。他の人や、他の会社や、他の国と競い合って、自分たちの取り分を増やしていこう、という時代だったんだ。
でも、これからの日本のように「人がどんどん減っていく」世の中では、たくさん作ったところで、買う人がいないから売れ残ってソンをしてしまう。そうすると「作ったり売ったりするの、やーめた」ってなるし、たとえ売れるモノであっても、働いてくれる人も足りなくなるから、モノやサービス自体がなくなっていってしまう。
それはつまり、食べ物やモノ・サービスなど、「生きていくためになくてはならないもの」を手に入れることがむずかしくなるかもしれないということなんだ。
だから、他の人や他の会社や他の国と、競争や争いなんてしてる場合じゃなくて、これからは話し合って協力していかなきゃいけない。
3.日本の子どもたちは、心の幸せ度が低い?
そんな世の中だからか、日本の子どもたちは、心の幸せ度が低いと言われている。ユニセフという団体の2020年に調べたところによると、なんと、38か国中37位だったんだって。だから、日本の政府も2023年から「ウェルビーイング」に注目して動いていこう、って呼びかけているよ。
「なぜ今、ウェルビーイングと言われるようになったのか」まとめ
- これまでのお金もうけ第一の考えかたでは、うまくいかないことが増えてきた
- 日本では、人の数が減ってきて、これまでの考えかた・やりかたが通用しない
- 日本の政府も、ウェルビーイングを大切に考え始めた
ウェルビーイングと(エスディージーズ)の関係
でも、さすがに多くの人が「そんなんじゃ、もう人間どころか、動物も、植物も、地球全体がボロボロになっちゃう、ヤバい!」と気がついてきた。
だから、「お金もうけのほかにも、めざすべきことがあるよね」といって生まれたのが「SDGs(エスディージーズ)」と呼ばれる目標なんだ。
小学生にもわかるSDGs(エスディージーズ)
これまでが「他の人はライバル」、「大きくなること」「(他を気にせず)もうけること」などを大事にしてきたとすると、これからは「他の人と、ともにすすめる」、「話し合う」、「それぞれのとくいを生かして工夫する」、「やりすぎないで、バランスを取る」ってことを大切に考えていこうってこと。それを忘れないために「SDGs」は、17のテーマに分けて目標を定めているんだね。
「自分だけ、家族や親せきだけ、自分の会社だけ、自分の国だけ、今だけ」で、「お金・モノ・えらくなること」ばかりめざすんじゃなくて、「自分たちだけでなく地球全体の、今も未来も」の気持ちで、「心も体も健康で、みんなが幸せにくらし続けられる社会を作ること」をめざしていこうってこと。
SDGsのそれぞれの目標がなしとげられた状態が、人間だけでなく地球上の動物や植物、環境にとっての「ウェルビーイング」に近くなるってことなんだね。
ウェルビーイングとSDGs(エスディージーズ)の関係まとめ
- 「今だけ」「自分だけ」の競争の時代から、未来とみんなのことを考えて、話し合い、力を合わせる時代になりつつある
- 未来とみんなのことを考えるための目標がSDGs(エスディージーズ)。
ウェルビーイングの取り組みの例
そうはいっても、「政治家の裏金が~」とか「大きな会社で不正が~」とか、イヤになっちゃうようなニュースも多いし、「今だけ!おトク!」みたいなお知らせも多いから、世の中はまだまだ「今だけ」「自分だけ」の考えかたの人が大半なんじゃないか?ってあきらめたくなっちゃうかもしれないね。
でも、「このままじゃだめだ!」と考えて、ウェルビーイングをめざして動き始めている人たちも、(今はまだ少ないかもしれないけれど)ぜったいにいる。少し例をあげてみるよ。
埼玉県横瀬町で、それぞれが考える幸せなプロジェクトをして、みんなで日本一幸せな町をつくろうというプロジェクト。町の人じゃなくてもいいんだって!
愛知県長久手市では、まちのみんながコツコツと、健康、いきいき、幸せに生活するまちに向かっているかどうかを確かめていくための「道具」づくりに取り組んだよ。
熊本県は、幸せのカギを4つに分けて、そのカギごとに満足しているかなどを調査して、みんなのお金をどう使うか決める材料にしているんだって。
きみの住んでいる市町村や都道府県でも、何か取り組みをしているかもしれないね。
どんな取り組みがあるのか(ないのか)、市町村や都道府県のホームページで「ウェルビーイング」で検索してみたり、クラスのみんなで「ウェルビーイング」について調べてまとめてみたりするのもいいかもしれないね。
ウェルビーイングのために、子どものきみに参考になりそうなこと
「ウェルビーイング」は、みんなのものでもあるけれど、きみのものでもある。
きみ自身がウェルビーイングに生きるためにはどうしたらいいだろう?
みんなでそのチャレンジをしていくうえで、子どものきみにも参考になりそうなことを紹介するよ。
『子どもの権利条約』
まず、きみという人間は、この世にたった一人しかいない、とても大切な存在だということを忘れないでほしい。世界の人たちで定めた「子どもの権利条約」で、子どももさまざまな権利*を守られている。日本も、1994年に「子どもの権利条約」を大事にしますと約束した。子どものきみの権利は、大人が守ることになっている。(きみも、まわりの子どもの権利を大切にできるともっといい。)
*権利…安心して、自分に自信をもって生活するために、あたり前のこととして、社会みんなで認めていくもの
「子どもの権利条約」(ユニセフのホームページより)
自分にとっての「幸せ」の“カギ”を知る
どんな状態が「ウェルビーイング」なのか、を研究している大人たちがつくった幸福度診断「Well-Being Circle(ウェルビーイングサークル)」というサイトがある。1回だけじゃなく、時々使ってみることで、自分が幸せを感じることは何によって変わるのかを考えるヒントになるみたい。使うにはメールアドレスが必要なので、おうちの人や先生に相談して、OKをもらってからトライしてみてね。
幸福度診断「Well-Being Circle(ウェルビーイングサークル)」 (株式会社はぴテック)
「幸せを感じやすい考えかた」を知る
「ウェルビーイング」の研究者たちは、幸せだと感じる人が持っていることの多い考えかたがあることに気がついた。
たとえば「やってみようと思えること」、「ありがとうと思えること」、「何とかなると思えること」、「自分は自分、と思えること」などの考えかたができると、幸せを感じやすいんじゃないかと考えている。そんないわゆる「ポジティブ」な考えかたじゃない人でも、どうしたらそんな考えかたを身につけられるのか、小学生向けに説明した本があるよ。興味のある人は読んでみよう。
「99%の小学生は気づいていない? ウェルビーイングの魔法」
みんなができるだけ「よい・満たされた状態」をめざす
何を「よい・満たされた状態」とするかは人それぞれだ、という話をこの記事のはじめのほうでしたよね。友だちや家族であってもそれは一人ひとりちがう。ということは、「自分がよい状態にある」ということによって、他の人がつらい状態にならないように、気をつけなきゃいけない。
それにはまず、自分のまわりの人にとってどんな状態が「よい状態」なのかを知っておくとよい。
そのちがいを知ったうえで、じゃあどうすれば、「みんなにとってのよい状態」になれるのかを話し合っていけるといいよね。
「心がいきいきすること」を3つ紙に書いて、まわりの人と見せ合うとかでもいいし、『わたしたちのウェルビーイングカード』を使ってもいいかもね。
わたしたちのウェルビーイングカード
※どんな状態が「よい状態」なのかを話し合うのにべんりな道具。
この記事を読んでくれたきみが、自分自身やまわりの人との「ウェルビーイング」を考えてくれるようになったり、「ウェルビーイング」の輪を大きくしてくれたりしたら、とってもうれしいです!